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2007年7月 6日 (金)

NBL 高部眞規子「知的財産権訴訟 今後の課題」を読む

『NBL』のNO.859(2007.6.15)とNo.860(2007.7.1)に二回に渡って連載されていた、東京地方裁判所判事・髙部眞規子裁判官の論考「知的財産権訴訟 今後の課題」を読みました。最近の10年間で大きな変化のあった知的財産権訴訟の実務について、特許権侵害訴訟を中心に、実体法および手続法の観点から論じたものです。大半の内容は特許法がらみですが、一部、著作権訴訟についても論じられています。僕は特許法については門外漢ですので、著作権法の部分について簡単に感想を書いておきたいと思います。

nbl
http://www.shojihomu.co.jp/nbl.html

さて、髙部眞規子裁判官といえば、ジャストシステム製ソフトウェア「一太郎」と「花子」に搭載されたヘルプモードが松下電器産業が保有する特許権を侵害したとして、松下がジャストシステムに対し、同ソフトウェアの販売差止等を求めて訴訟を提起した「一太郎事件」や、このブログでもそれなりに詳細に検討した「MYUTA事件」を担当したことで有名な裁判官です。

高部眞規子 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E9%83%A8%E7%9C%9E%E8%A6%8F%E5%AD%90

一太郎事件知財高裁大合議判決について
http://www.venus.dti.ne.jp/~inoue-m/bm_patent_law_ichitaro_kousai.htm

Rivastの朱夏日乗: オンラインストレージサービスが著作権侵害?
http://rivast.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_ed65.html

Rivastの朱夏日乗: MYUTA事件判決文を読む
http://rivast.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/myuta_84ec.html

髙部眞規子裁判官は、「一太郎事件」においては松下の主張を認め、ジャストシステムの「一太郎」「花子」の製造、販売差し止め、廃棄を認めていますし、「MYUTA事件」においては、オンラインストレージサービスが著作権侵害となることを認めました。このことから、特にネットにおいては、あまり評判の良くない裁判官であるかもしれません。そんな本稿ですが、まず、「1 著作権訴訟の現状」として、以下のように述べていらっしゃいます。

いわゆる「カラオケ法理」に関連して、ユーザーが直接侵害行為を行い、業者の支配管理が及ばない場合において、ユーザーの行為をツールやサービスを提供した業者の行為と見ることができるかという侵害の主体ないし業者の責任をめぐって、多くの係争があり、議論も活発になされている。

この指摘は非常に重要だと思います。いわゆる「カラオケ法理」は、ファイルローグ事件や選撮見録事件等の数々の事案に対しても適用されており、その適用範囲の一見すると無限定に見えるまでの拡大に対しては、個人的には反対です。この点については、高部裁判官は次のように述べられており、その論旨には僕も賛成です。

侵害の主体の問題に関しては、少なくとも、間接正犯型の場合や、もっぱら著作権侵害を目的とする機器の製造・輸入・譲渡ないしサービスの提供等の行為であって、現実に侵害を行うユーザーを特定して権利行使をすることが不可能であるような場合に、侵害専用品やサービスの提供者の行為を著作権侵害とみなす旨の立法が強く望まれる。

他方、直接侵害者ではない関与者の責任をあまりに広く追求すると、侵害でない仕様を行うユーザーが新しい技術の恩恵を受けることができないなどの社会的な損失も伴うことに照らすと、その責任を認める範囲に適正な限界を設ける必要がある。

罪刑法定主義や法的予測可能性を担保するためには、解釈論ではなく、立法論で対処するべきだと思います。しかし、立法論に任せきりで本当に大丈夫かというと、少し心配しています。なぜかというと、やはりコンテンツホルダーの側がロビー活動等の政治的影響力は強いわけですから、真にインターネット時代に適合的な、ユーザーフレンドリーな立法がなされるのかどうか疑問だからです。たとえば、最近でもコピーワンスの緩和がうやむやになってしまっていますが、あれと同じことが著作権法の改正でも起こり、結果として、現状よりもガチガチに権利保護が強化されてしまわないか、懸念しています。

高部裁判官も述べておられますが、「著作権法1条にもうたわれている著作権の保護と著作物の利用による文化の発展のバランス」がとれるような立法論と判決に期待したいと思います。

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