放送禁止作品と著作権
今日は@niftyの運営するお台場のイベントハウス「東京カルチャーカルチャー」で開催された「超ブレイク塾presents 第2回コンテンツ権利勉強会 SamuraiRightS 放送禁止作品と著作権」に行ってきました。
放送禁止作品と著作権 TOKYO CULTURE CULTURE:@nifty
http://tcc.nifty.com/cs/catalog/tcc_schedule/catalog_080501187452_1.htm
エンタメロイヤー四宮隆史弁護士や音楽ジャーナリスト津田大介氏を招いた、著作権の将来を考える上で非常に勉強になるイベントでした。また、一般には視聴が難しい放送禁止作品を多く目にすることができ、貴重な経験になったと思います(書いても良いかどうか迷いますが、一部の放送禁止作品は、YouTubeで視聴することができます)。
以下、簡単に勉強会の内容を箇条書き的に残しておきたいと思います。
第一部 四宮隆史弁護士による基調講演「放送禁止作品から見る法律の考え方」
- なぜ放送禁止になるのかというと、(1)内部的要因と(2)外部的要因がある。(1)内部的要因とは、当事者間の契約による制限や、内部関係者の自主規制のことである。(2)外部的な要因とは、右翼団体からの圧力(最近でいうと『靖国 YASUKUNI』とか)や、法律による差止のことである。法律による差止の根拠としては、著作権、名誉、プライバシー、肖像権などがある。
- 法律による差止によって放送禁止となる場合は数としては少ない。法律による差止が一番効果が低いからである。効果が低い理由としては、(1)法律による差止を行うには非常に手続が面倒で時間がかかりすぎるので、被害の拡大を食い止められないからという現実的な理由、そして、(2)著作権法では差止請求権が認められているが、名誉、プライバシー、肖像権には差止請求権が法律上存在しないため、相当な違法性がないと裁判上で差止が認められないから(例として『石に泳ぐ魚』裁判)という理由が挙げられる。
- 一般的に、裁判は和解で終わるケースが60~70%である。和解の場合、どういう結論になったかは公表されない。エンタメの世界はまだ判決まで至った裁判例が少ないので、弁護士でもこの事件はこうなると判断できないことが多い。
- 放送法は、放送局に対し、公共の福祉に適合するような放送を行うことを義務づけている。放送局は、その規定に従い、独自のガイドラインによる自主規制を行っている。映倫等の他の自主規制団体も同様である。しかし、それらの自主規制には法的拘束力はない。従って、たとえば自主規制により上映しないと映倫により決定された映画を上映しても違法にならない。ただ、現実的には、全国の映画館は「映倫の自主規制に従う」ということになっているので、上映されることはないことになっているのである。
第二部 パネルディスカッション「スライドで見る放送禁止作品」(パネリスト:四宮隆史弁護士、津田大介氏、天野ミチヒロ氏、コソボックス小西(?)氏)
- ウルトラセブン 第12話 「遊星より愛をこめて」
【理由】「ひばく星人」という怪獣の名前。内容は反核だったが、名前で判断されてしまった。
(天野氏)『放送禁止映像大全』は自分が「浮浪者」だったからこそ捨て身で書けた。普通は書くと干されるので無理。なお、放送禁止作品の中には、CS等で「本作品では放送当時の表現をそのまま使っています」といった「お断り」を入れた上で放送されているものもある。地上波の方が自主規制は厳しい。
(四宮氏)地上波の方が自主規制が厳しいのは、法律上、伝播可能性が高いとされているから。逆に、CSやネットは伝播可能性は低いとされている。しかし、今後は逆転していくのではないか。 - 怪奇大作戦 第24話 「狂鬼大作戦」
【理由】刑法39条を悪用して、精神異常を起こす機械を使った殺人事件というテーマだが、封印された正確な理由は不明(脅迫があった?) - レインボーマン 第9話 「タケシを狂わせろ」
【理由】主人公が薬によって狂わされるという話だが、関係団体から抗議があったため。精神異常者であることを表す目のクマという特有のメーキャップも抗議の対象となった。
(津田氏)類似の表現は現在でも映画でなされている。映画と地上波では基準が違うのか?
(四宮氏)テレビの自主規制の方が基準が厳しい。映画を作成する場合、二次利用としてテレビ放送することを考えてテレビ並みの規制を入れることもあるが、あえて二次利用を諦めて作成されるケースもある。 - 獣人 雪男
【理由】「畸形の多い閉鎖的な山の民」という設定が部落問題を想起させるから。 - 帰ってきたウルトラマン 第33話 「怪獣使いと少年」 ※非放送禁止作品
【理由】残酷ないじめや在日問題を描いているから。 - 超人バロム・1 ※非放送禁止作品
【理由】悪役と同じ名前の人からクレームがあったが、和解できている。なお、「この作品はフィクションであり~」というテロップが入るようになったのはこの作品が最初である。 - ギフト
【理由】ドラマで使われた小道具である「バタフライナイフ」を使った殺人事件が起きたから。 - 巨人の星 第10話 「日本一の日雇人夫」
【理由】タイトルの「日雇人夫」が差別用語のため。現在発売されているDVDでは「日本一の父 一徹」に変えられている。 - ジョジョの奇妙な冒険 Adventure6 「報復の霧」
【理由】ホルホースがDIOを裏切ろうとするシーンでDIOが読んでいる本の文字がコーランと同じなので、イスラム教の侮辱にあたるから?
(津田氏)今回の騒動は特定の個人が大量にマルチポストしていたに過ぎないものを共同通信が過剰に反応したという面もある。実際、イスラム圏ではそれほど問題視していないという声も聞く。今回の件を見るに、ネットによる検証プロセスが発達しつつあるので、これまでは不明確だった自主規制によるプロセスが明確になるのではないかという気もする。そもそも、日本には宗教によるタブーがないので、表現規制はかなり緩やかである。 - キャンディキャンディ
【理由】著作権をめぐる裁判のため。詳細はWikipediaを参照。
(津田氏)原著作者とのトラブルはかなり多いが、クリエイターが自分の作品を我が子のように愛しているからという一面がある。そのことと著作権法の目的である「文化の発展」が対立しているのかもしれない。また、日本の著作権法上、著作者人格権が強すぎるのも問題であるが、著作権法学会等のパブリックな場では、著作者人格権を見直す動きが出ているようである。
(四宮氏)著作者が著作者人格権を行使した例として「ひこにゃん」があるが、彦根市は契約により著作者人格権の不行使を義務づけていたはず。ただし、そのような不行使特約の有効性については疑問があるので、彦根市ではあえてその点を裁判による明確な判断をせずに回避したのかもしれない。
(津田氏)ビジネスとして考えると、売れるかどうかもわからないうちからクリエイターに大金を支払う契約を締結することは難しいだろう。しかし、一定の売り上げを上げた作品であれば、事後的にクリエイターにその一部を還元する仕組みがあると良いのではないか。そもそも、クリエイターは、権利云々をやる暇があったら創作に専念したいのかもしれない。
以上
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