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2008年6月15日 (日)

慶応義塾奇術愛好会第45回定期発表会「AUCTION」鑑賞

昨日は、慶応義塾奇術愛好会(Keio Magician's Society、略称KMS)の第45回定期発表会「AUCTION」を鑑賞してきました。本格的なステージマジックを観るのは、昨年のKMS第44回発表会「Bar~Gin Trick」以来ですので約一年ぶりでしたが、実に面白かったです。NHKがFISMを放送しなくなり、一時期のTVの手品ブームが過ぎてしまって、最近はステージマジックを観る機会がメッキリ減ってしまった気がしますね……。僕自身はクロースアップマジック中心ですが、今回の「AUCTION」を観て、特に演出の発想において学ぶべきところも多かったように思います。

「AUCTION」概要
日時:6月14日(土) 18:00~19:40(休憩時間含む)
場所:ヤクルトホール
観客:約400名

Kms45

全体的な感想としては、1.マニピュレーションの復権、2.演出におけるデジタル加工技術の進歩、3.「手品」のマージナル化ということを覚えました。

1.マニピュレーションの復権ですが、去年の「Bar~Gin Trick」では全14演目中7つがプロダクションで、ジャグリングやクロースアップやパントマイムなどが5演目でしたので、マニピュレーションは2つしかありませんでした。それに対して、「AUCTION」では、4演目に増えていました。その理由を強引に推測するとは、特にウォンドの演技を観て感じたことですが、最近の「ペン回し」ブームのようなものが背景にあるのかもしれません。

2.演出におけるデジタル加工技術の進歩ですが、いくつかの演目で演技に合わせて編集されたBGMが使われていたり、フィナーレの挨拶にCGで綺麗に作成されたムービーが流されていたりします。これらのデジタル技術は数年前から使われてはいましたが、まだまだ実験的という感じで、まだまだレベルが高いとは言えないものでした。それが、今年の一演目は完成度が非常に高く、大げさに言えば、ステージマジックの演出の新しい可能性を感じました。

3.「手品」のマージナル化とは、僕が現役だった頃の発表会と言えば、オーソドックスな手品が大半で、ジャグリングが例外として入っているという感じでした。ジャグリングが入っていることでさえ、KMSの特徴だと言われていたくらいでした。それが、今年はジャグリングが3つの演目にも分かれていて、ダンスの要素を取り入れた演技もあったりして、「手品」という概念が他のジャンルのエンターテインメントと融合して、新たしい方向に進化しているような気がします。去年も書きましたが、「奇術愛好会」の発表会だから必ず手品を演じなければいけないわけではなく、神秘性・幻想性・非日常感・非現実感のようなものを観客に与えられる舞台であれば、何でも良いと考えています。

さて、以下は個別の演目の感想を簡単に述べてみたいと思います。

一部

1.「Garden」(フラワー)
落ち着いたオーソドックスな演技で、マジックショーの開幕を飾るのにふさわしいと思いました。赤い花をストリーマーに変える演出が美しかったです。それにしても、僕が現役だった頃に比較すると、ギミックがずいぶんと進歩していますねえ……。

2.「Αρχαριοζ」(ボールジャグリング)
もはや5ボールが当たり前になっていますね。技術レベルの高まりを実感します。個人的な感想ですが、二部5番のバウンスボールジャグリングと別々の演目に分けなくても良かったのではないかと思います。

3.「もう歌しか聴こえない」(ディスク)
コインの変形の演目で、CD(コンパクトディスク)を使った演技です。今回の発表会の中で一番面白かったです。CDを使ったミリオンなんかをやるだけあって、技術的に高いだけでなく、演技とBGMが完璧にシンクロしているところが素晴らしかったです。BGMとのシンクロとは、たとえばCDの大きさが小さくなるとBGMも音量が小さくなったり、CDの数が増えるとBGMのパートも増えたり、CDの色が変わるとBGMの曲も変わるという感じです。当然、BGMは自作なのでしょうが、そういうBGMを作成できるだけの音楽編集技術はスゴイですね。前々から考えていたことですが、視覚のみに頼る手品というのは奥行きが狭いと思います。視覚だけでなく、聴覚とか触覚とか、他の感覚も使えるような手品が理想だと思っていました。その点、この演技は理想的でした。もう一度生で観てみたいものです。

4.「Jack in the box」(アラカルト)
ステージにゴミ箱が置いてあって、それを使った不思議な演技でした。上半身が透明になる現象が、妙に味があって良かったです。とはいえ、演技時間がもうちょっと長くても良かったようにも思います。

5.「Gekokujo Extacy」(リング)
男女ペアでのリングの演技です。赤いシルクを使って、リングがつながった、外れたということを効果的に表現できていたと思います。とはいえ、二人の交互に行う演技のために、観客がどこを注意して観れば良いかがぼやけてしまうきらいもあるように思います。

6.「Dignite Solitaire」(カード)
オーソドックスな演技で、技術力も高いと思います。ミリオンカードが綺麗で、失礼な言い分ですが、学生さんの演技でカードを沢山出してくるのが不思議に見えた演技は久しぶりです。もう少し構成に奇抜さがあっても良かったかもです。トリネタの噴水カードの出力は相変わらず高いです。

7.「In the mood」(ウォンド)
タキシードを着ている必要性は疑問でしたが、マニピュレーションのレベルは高いです。トリネタとしてアピアリングケーンにつなげる構成は面白かったですね。最近の「ペン回し」ブームに影響されたと思われる演技が一部にありましたが、あまり「ペン回し」っぽさを重視しすぎると、ジャグリングになってしまって、不思議さが消えてしまうのではないかと、旧いOBとしては少し気になります。

8.「四季ノ唄」(和妻)
最近のKMSで恒例となっている二人の演者による和妻です。最初の桜色のホリの色がとても綺麗でしたね。まさに日本の四季というものを実感できたと思います。道具の不具合が残念でしたが、相変わらずの大迫力でした。

二部

1.「諸君、私はクラブが大好きだ」(クラブトスジャグリング)
3人組のクラブトスです。かなり練習しているようで、3人が交互に入れ替わりながらボクシングをしたりするくらいのレベルの高さでした。決めポーズがカッコいいのですが、型が決まっちゃっている感じがあって、拍手しづらい雰囲気があったのがちょっと残念です。

2.「Sereuity from Trussardi」(ワイン)
実にオーソドックスな演技で、ジャグリングの直後の雰囲気を上手く手品に誘導できていたと思います。本物のブドウが出てくるのが面白かったですが、そのブドウを使った演技につなげてくれるとさらに良かったかもです。ワインタワーのためだったのかもしれませんが、テーブルの下に赤い絨毯が敷いてあったので、液体を使った演技があるのかもと思いました。

3.「Dark Chest of Wonders」(マスク)
元となっているルーティーンは、KMSの伝統的なものだと思いますが、演者の意思に反してマスクが制御できなくなる部分がなくなったことで、構成がスッキリしたように思います。マスクの連続チェンジは迫力がありました。最後にサーベルみたいなものを出すのが面白かったですが、それを最後に何かにつなげてくれるとなお良かったかもです。

4.「(ダンスと手品)」(ダンス)
パントマイムとダンスと手品を組み合わせた演技です。何とも言えない魅力がありますね。歯車とBGMがリンクしていたり、ダンスの演技とハートが出てくる手品がつながっていたりと、個々の要素は面白いのですが、それらが単発で終わってしまっているのが残念に思いました。

5.「The Art of Rhythm」(バウンスボールジャグリング)
記憶が定かではないですが、バウンスボールをメインに据えたジャグリングは、KMSの発表会の中でも初めてではないでしょうか。新鮮でとても面白かったです。5ボールのバウンスから、そのまま5ボールカスケードにつなげるところがとても良かったです。7ボールのバウンスもスゴイです。来年は7ボールバウンスからカスケードにつなげてくれることを期待しています。

6.「Teardrops of the Moon ~撞球の調べ~」(四ツ玉)
上述のマニピュレーションの復権を象徴するような非常にテクニカルな演技でした。シェルのローリングやバックアンドフロントなど、まさにマニアとしか言いようがありません。これぞ学生マジックという感じで、思わずにやけてしまいます。途中で不測の事態が起きましたが、裏方がよくカバーしていたと思います。裏方の皆様もおつかれさまでした。

7.「Dove Dance」(ハト)
一番手品らしい演技だったと思います。発表会のオオトリを飾るのに相応しいオーソドックスかつ丁寧な演技だったと思います。また、オーソドックスさのなかに、最初の2羽で派手な素出しを連発するなど、迫力も十分でした。助手の女の子の動きも落ち着いていて良かったと思います。

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コメント

詳細レポありがとうございました。学生マジックと言えば(いい意味での)無茶なスライハンドだと思っているのですが、昨今無くなってきた事を寂しく思っていたので非常に勇気付けられましたw 


こちらのグレゴリー・ウィルソンのレクチャーも濃密な2時間半でした。我々もちょっとこう、定期的に練習しないといけませんよw

http://d.hatena.ne.jp/propateer/20080614

投稿: きょうじゅ | 2008年6月16日 (月) 00時53分

きょうじゅさん、コメントありがとうございます。

グレゴリー・ウィルソンのレクチャーレポートも読みました。そっちも行きたかったですよ。今度、誰かのレクチャーがあったら、ぜひ参加してみたいです。

今年はマニピュレーションが盛んになっていて、良い意味での「学生マジック」らしさが戻ってきているように思いました。

というか、プロダクションはロードとかミスディレクションの技術が絶対に必要だからモロに実力がわかってしまうので、正直言って学生さんのレベルで不思議に観せられるように演じるのは難しいと思います。それに対して、マニピュレーションだとアップテンポな音楽のノリと連盟の声援の勢いで突っ走れちゃう感じがありますよね。

だから、学生マジックのステージはやっぱりマニピュレーション中心のほうが良いんじゃないかと実感したところですよw

投稿: Rivast | 2008年6月16日 (月) 09時26分

Rivastさん

報告どうもありがとー

見に行けなかったので状況が伝わってきてうれしいです。

面白そうだったので
見れなくて残念・・・

来年は行きますよ。。

投稿: Nyoyo | 2008年6月18日 (水) 01時18分

Nyoyoさん、コメントありがとう!

今年の発表会はなかなか面白かったですよ。特にディスクの演技は必見です。そのうちKMSのメーリングリストに発表会DVDのお知らせが来ると思いますので、是非見てみてください!

来年は通し練のときから行きましょうw
さすがに現役さんとこれだけ歳が離れると、一人では見に行きにくいのですよ。いちまささんは2回行ったらしいですが……。

投稿: Rivast | 2008年6月18日 (水) 09時46分

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