『タロットカード・マジック事典』読了
松田道弘『タロットカード・マジック事典』を読了しました。恥ずかしながら、手品の専門書を読むのは実に久しぶりです。面白そうな本は出版されるたびに買ってはいるのですが、なかなか読む機会がなくて……。
本書は、タロットカード、その中でも「大アルカナ」と言われるタロット占いなどで見かける絵柄の入ったカードのみを使った30数種類のマジックを解説した本です。初心者向けのマジック、本格的に手品をやる人向けのマジック、エキスパート・マジシャン向けのマジックと大きく三部構成になっていますので、幅広い層にオススメできる一冊だと思います。また、タロットの歴史なども解説されていますので、読み物としても面白いです。
個人的に、手品の最も重要な要素は「神秘性」にあると考えています。ですので、重大な何かを暗示していそうな大アルカナの絵柄の呪術的イメージは、手品に似つかわしいと思います。もちろん、あまり演出をやり過ぎて本物の魔法のように見せてしまうのは、マジシャンのマナーとして避けるべきではあると思います。松田道弘さんも本書のなかでそのような忠告をしていますね。
さて、本書のなかで一番気に入った作品は、「3×3マトリックス タロット版」というものです。現象としては、以下のとおりです。縦横3枚ずつ合計9枚の大アルカナをテーブルに並べます。そして、コインを1枚観客に渡し、好きな大アルカナの上に置いてもらいます。それから、観客にこれからやる指示を書いたメモを渡し、そのとおりに行動してもらいます。行動の大枠は、大アルカナから別の大アルカナに指定した回数、自由にコインを動かしてもらい、動かし終わったらメモに予め指定された大アルカナを1枚取りのけていくというものです。そうやっていくと、最後に1枚だけ大アルカナが残りますが、それがメモに予言されているのです。
コインを動かすのはあくまで観客の自由意思であるのに、メモの予言が次第に実現していくところが非常に神秘的で優れたトリックだと思います。ただ、タイトルに「タロット版」とあるとおり、このトリックはタロットカードでなければできないという性質のものではありません。本書にもクレジットがされていますが、松山光伸『セルフワーキング・マジック事典』にはトランプで演じるバージョンや、世界地図を使って国際指名手配犯を追い詰める演出などが解説されています。同書によれば、元ネタは、マーチン・ガードナーがサイエンティフィック・アメリカンで取り上げたものだそうです。
このように、本書は、『タロットカード・マジック事典』というタイトルではありますが、実はタロットカードでなければできない作品はほとんどなく、大半はトランプやその他の手段で代替可能なセルフワーキング・トリックだったり数理トリックだったりします。むしろ、既存のトリックのタロットカードを使った演出集という趣の本なのです。本書を購入しようと思われている方は、その点に気を付けられた方が良いと思います。本書を読むと、手品で大切なのはやはり技法ではなくて演出なのだなあと実感します(もちろん、ベースとして技法は重要ですが)。
たとえば、"Torn and Restored Card"にしても、神秘性ということを考えると、トランプでやるよりも大アルカナでやった方が効果的だったりするかもしれません。Wikipediaによると、逆位置の「死神」には「死からの復活」という意味があるようです。としたら、最初に逆位置の「死神」をフォースして、それから"Torn and Restored Card"につなげるなんてアイディアが使えるかもしれませんね。本書を読んで、久しぶりに手品の演出について自分なりのアイディアを考えみています。誰に見せるというわけでもないのですが、なかなか楽しいものです。
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コメント
いつでも拝見しますよ!
ただ、大アルカナというかタロットカードは縦に長いのでT&Rやるのがちょっと難しいのは秘密です。
投稿: きょうじゅ | 2008年6月 2日 (月) 00時34分
きょうじゅさん、お久しぶりです。コメントありがとう!手品飲みをやろうと言いつつ、なかなか時間が合いませんなあ。
なるほど。ブリッジサイズを大きくしたような感じですからね。日本人の手の大きさには合いにくいかもですね。
あと、タロットカードを使った演出は面白げなんだけど、男が持ち歩く不自然さはトランプよりも上な気がして、ちょっと躊躇しちゃいますね。
そういえば、今年も発表会は行きますか?いつだったか忘れちゃいましたが……。
投稿: Rivast | 2008年6月 2日 (月) 09時38分
14日です。
私はまさにその時間、グレゴリー・ウィルソンのレクチャーにいきますがw お時間あればいらっしゃいます?八重洲で午後6時半スタート。自分の参加しているサークルが主催なので(二川さんが講師をやっているのです)、たぶん先に言っといて頂ければ1000円くらいで参加できるような気もしますよ。
投稿: きょうじゅ | 2008年6月 5日 (木) 10時13分