目には目を、歯には歯を
法諺第3回目は、ハンムラビ法典の有名な一文「目には目を、歯には歯を」を取り上げてみたいと思います。あまりに有名すぎて、これが法諺なのかと訝しむ方もいらっしゃると思いますが、この言葉は、いわゆる「罪刑法定主義」を明示したものであり、その重要性は現代においても全く色褪せるものではないと考えます。
ハンムラビ法典 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%A0%E3%83%A9%E3%83%93%E6%B3%95%E5%85%B8
上記のWikipediaにもちゃんと書いてあるのですが、そもそも「目には目を、歯には歯を」は、「やられたら徹底的にやり返せ」とでもいった「力こそ正義」的な野蛮な原則の表明ではありません。そうではなくて、「同害報復の法理」(別名「タリオの法理」ともいいます)と呼ばれる法原則を明文化したものなのです。タリオの法理とは、ある被害を受けたら、その報復として行なうことが認められるのは、その被害と同じ程度までの反撃であるという原則です。
つまり、目を潰されたら、やり返して良いのは相手の目を潰すところまでであって、それ以上痛めつけて相手を殺してしまったりするのは禁止するという意味になります。このようなタリオの法理が必要になる理由は、自分が被った害以上の報復を認めてしまうと、果てしない暴力の連鎖が生じることになってしまい、結果として、社会秩序が維持できなくなるというところにあります。
そして、ハムラビ法典に端を発するタリオの法理は、形を変え、洗練されて、「罪刑法定主義」として、現代の日本の刑法にも受け継がれています。罪刑法定主義とは、犯罪とされる行為、および、それに対して科される刑罰を、予め、法律で規定しておかなければならないとする原則をいいます。何をすれば犯罪となり、その結果としてどのような刑罰を科されるのかが予め明確にされていますので、逆に考えれば、そのような行為以外は犯罪とはならないわけですから、人々の行動の自由が保障されるというわけです。そして、ある行為に対して課される刑罰が明示されていますから、恣意的な処罰が行なわれなくなり、平等も達成されることになるのです。
罪刑法定主義 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BD%AA%E5%88%91%E6%B3%95%E5%AE%9A%E4%B8%BB%E7%BE%A9
ハムラビ法典における「目には目を、歯には歯を」の原則も、上記のような自由と平等を図る目的の規定でした。とはいえ、バビロニアの時代は、現代ほど平等な社会ではありませんでした。つまり、奴隷制度が存在しましたので、ハムラビ法典もそれに応じて、「目には目を、歯には歯を」の原則を完全に平等に適用していたわけではありませんでした。市民が奴隷の目を潰したりした場合は、罰金を払えばそれで済んでいたそうなのです。その点には留意すべきであると考えます。
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